査定 B 満ち溢れる王者の風格

計67発、192打点の打棒でリーグ連覇の立役者となった松田と李大浩の去就に揺れた今オフ、しかしフロントは悠然たる構えを崩すことはなかった。松田が海外FA権の行使を宣言しても、「宣言残留」の扉を閉ざさず、最終的にメジャーとの交渉が折り合わなかった同選手と推定4年16億円で再契約。12月24日、ファンにとっては、何よりも嬉しいクリスマスプレゼントとなったことだろう。
一方、李大浩の動向を年をまたいでも動かない。それでも、球団は代役の助っ人獲得を表面化させることなく、「待ち」の姿勢を続ける。結局、去就が固まったのはキャンプ開始後の2月3日。マリナーズとのマイナー契約を決断した主砲は、2シーズンを過ごしたホークスとの訣別し、悲願のメジャー挑戦へと邁進したのだった。

両選手とも、チームにとって不可欠な戦力であることは大前提。しかし、ポジションであり、チームリーダーとしての存在感であったりの点から、より替えが利かないのは松田のほうであったことも、また異論のないところであろう。
よって、松田の残留が決まった段階で、フロントには今オフ中にこれ以上の大掛かりな動きには出ず、無期限に近い状態で李大浩の動向を待つ余裕が生まれた。嫌な見方をすれば、時期的に見ても、的確な補強を行えるだけの選択肢がなかった所以とも言えるのだが、こと李大浩の代役という意味においては、決して余裕という表現が負け惜しみに聞こえないだけの陣容が揃っているのも事実。

もっとも分かりやすいのは「李大浩の抜けた一塁に内川が移り、空いた左翼に期待の高卒3年目上林が入る」とする見出しを付けること。しかし、これはさほど正しい観点ではない。李大浩が昨季一塁の守備位置に就いたのは54試合のみ。残りの87試合はDHとして出場しているからだ(参考:NPB公式サイト)。
他に一塁を守ったのは、主に中村晃と明石で、この二人はそれぞれ外野手や二塁手としても数多くの出場機会を踏んでいる。また、李大浩が一塁守備に就いた試合でDHを務めたのは主に内川、長谷川の二人。彼らも同様に、本職の外野での出場機会と並行してDHの役割をこなしていた。
ここ数シーズン、守備の要と言える三塁の松田、遊撃の今宮、中堅の柳田以外の起用については、このようなローテーション起用が恒常化しており、今季も継続される見込みゆえ、内川が「一塁手」として埋める限度は、あくまで李大浩が昨季守った54試合くらいが目安ということになるだろうし、従来通り左翼やDHとして起用される機会も多くあるはずだ。つまり、李大浩の穴を守備位置の面から考察することには、あまり意味を持たないことになる。

それでも、上記のような見出しが必ずしも的外れと言えないのは、現在におけるレギュラークラスの年齢構成から考えて、球団が上林のスタメン定着を喉から手が出るほど欲しているであろうことが容易に推測されるからだろう。
もしも上林がレギュラーの一人として外野の一角に定着すれば、成り行きで内川は一塁やDHとしての出場機会が増える。ましてキャンプの報道を見る限り、首脳陣は上林に守備面の負担が少なく左翼を守らせたいと考えている節があり、そうなると、中村晃のライト起用も従来より多くなることが予想されるから、向こう5年以上を計算できる外野3ポジションが左打者で埋まるということにもなる。ならば、自ずと今後の補強において、強化に着手すべきポイントは詳らかになっていくのではないか・・・
もちろん、これは上林が今季見込み通りレギュラーに育つという前提に立ったある意味都合の良いプランだが、少なくとも可能性自体が大きく広がったことに疑いはないはずだ。

すなわち、目先のシーズンをどう勝つかに拘るのではなく、真の意味で「10連覇」を見据えた長期的な視野に立ち、実際の移籍市場における明確な行動へと結び付けられる。ソフトバンクがこれまでに存在した数多くの「金満」(野球界に限らない)球団と本質的な違いを有する根拠がここに詰まっている。
ドラフトにおける、徹底した「将来性」志向も根っこにあるのは同じこと。高い次元で組織化された三軍制度のもと、2年前、3年前に獲った選手たちが順次一軍に輩出される以上、余程イレギュラーな事態が起こらない限りは、その年のドラフトで即戦力に拘泥した指名を行う必要性はなく、他球団が即戦力指名に躍起となる中、将来性豊か好素材を3人、4人と確保することが出来るわけだ。1位で競合を制し、獲得した高橋以下、6人の高卒選手が並んだ今回のドラフトは、まさに充実著しい現状への自信と誇りがにじみ出る会心の指名だったのではないか。
実際の戦力収支としては、マイナスに針を向けざるをえないのが今オフの動向ではあるが、ただ漫然と戦力を落としたのではない。
単純に戦力の移動のみを記すだけではその根拠を十分には表しきれないと感じたため、やや他球団とは構成を変える形で筆を進めてみました。


2月以降の動向
とはいえ、あくまでチームとしての最大にして唯一の目標は日本一の三文字に尽きるわけで、水面下において、当然新助っ人の調査は継続され、開幕前後のタイミングでのチーム状況(この時点ではとりわけ主力クラスに大きな故障が出ているかどうか)に応じた補強を行うか否かの第一判断が行われる。
それ以降もウインドウが閉じる7月末までの間、チームに不足する箇所を迅速かつ的確に補うため、あらゆる補強手段を想定した上で、あらゆるセクションが常時慌ただしく稼働していくことでしょう。