秋~春を終えた2015シーズンの奈良県、投手というカテゴリの中で最大の驚きを提供しているのは秋8強、春4強入りと古豪復活の機運を高めている御所実の2年生エース山本(右腕)だろう。昨夏の時点で181センチ、84キロという恵まれた体格。無論、現状その域にはないですが、投球フォームなどは秋山拓巳(阪神)の高校時代(秋山は3年になってから振りかぶって投げるのをやめたので、その前の時点ということですが)を彷彿とさせるところがあり、また春以降リリーフ役に回ったことで、「御所の大魔神」とでも言うべき風格さえ漂ってきた。そう、この投手の何よりの魅力はピンチを迎えようと、表情も制球も変わらず、自分の投球に徹することが出来る下級生離れしたマウンド度胸です。
球速は意外に130キロ前後くらいのようで、空振りをバンバン奪うというよりも見るからに重そうな球質でバットを押しこんでいく。変化球はスライダー(横)とカーブが主な球種、このタイプの割に制球が良いので、カウントも稼げますし、上手く打者のタイミングを外して、ゴロを打たせることができるのも魅力ですね。
今後、ストレートの球威・球速を増し(常時140キロ前後くらい)、落ちるボールの習得など投球の幅を広げ・・・といったいっそうのスケールアップを遂げていく必要はありますし、牽制、クイック、フィールディングなどにも磨きをかけていって欲しいですが、残り1年でそれらをクリアしていき、県を代表する投手へと育っていく可能性は十分にありそうです。
その山本くんを追うように急成長してきたのが1学年先輩の右腕藤田。この春先発投手として全試合に先発。殆どの試合で5~6回くらいまで投げて試合を作り、リリーフ役の山本に繋ぐ好投。昨年のセンバツに出ていた報徳・中村くんみたいにいい感じでバラつくのが踏み込みを許さない要因になり、また配球的にもそこをプラスに作用させながら小気味良く投げて翻弄していく上手さが有ります。
ただ、これも去年の中村くんとよく似ているのですが、3巡目くらいになってくると逆にストライクが揃うような形になって対応を許し始めるので、そこで山本くんへの継投というケースが定番になっていました。決して遅きに失する事なく的確なタイミングで決断していく監督さんの嗅覚自体は確かながら、あえて言うならイニング途中ではなく、もう5回なら5回でスパッと代えてしまうというのも1つの作戦なのかなという気もしたり・・・
その点は春の戦いを経て、夏にどうなっていくのか注目しているポイントだったりします。


次は春準優勝の橿原学院。春はいずれも3年生の4投手が投げましたが、軸になるのは下級生の頃から経験豊富な扇本樫田の両左腕。個性という意味では制球にやや難がありつつも、縦スラの切れがよく空振りをとれるエースナンバーの扇本くんに分があり、一方の樫田くんはまとまった好投手タイプ。派手さはないですが、扇本くんが早めに降りたケースなどで淡々と試合を作り直す投球が光り、夏に向けてもう少し球威・球速が増してくれば、夏のエースナンバー奪還も現実的か。
この他、宮内くんは184センチの大型左腕。実戦経験がまだ少なく、春は打ち込まれるケースが多かったものの、さらに力をつけているようなら楽しみ。春の16強、8強で好投を見せた島田くんは4人の中では唯一の右腕で、小柄なテークバックのやや変則的なタイプ。目先を変えられる緩いボールも持ってたりで、強豪校相手にも「行けるところまで」という形で投げさせてみても面白いタイプなんじゃないかなと。

ここで智辯の登場。なんといっても注目は1年生ながら昨夏の甲子園で登板の機会を得、勢いのある速球で好印象を残した村上だろうと思いますが、秋に観た時は全体にリズムが良くなくて、先発で長いイニングを投げるとなると少し考えすぎるところがあるのかなあ・・・という風に見えました。
この点、春はエースナンバーの左腕松田くんか2年生の左腕藤田くんが先に投げて、村上くんはリリーフに回っていたよう。2人が良くなっているようなので、今夏に関してはその形が一番ハマるのかなあという感はありますね。

忘れてはいけないのが、この世代では早くから評判になっていた平城の小さな快腕鷲尾ですが、大会前半から強豪と組まれ、なかなか上位へと勝ち抜けない大会が続いています。彼に関してはかなり早い段階から書いてきた投手ということで、今回あえて特徴等については触れませんが、左腕の小林という投手が公式戦で1年ぶりの登板を果たし、夏への目処がついたのは収穫で、これによって鷲尾くん1枚に頼らざるを得なかった投手陣の問題が解決するようなら、これまでよりは少ない負担で投げられるはず。
最後の夏、持ち前の力強いまっすぐでゴリゴリ押していくピッチングが見られるか、注目したいですね。 

秋4強、春8強と躍進した奈良北のエースは左腕堀川。典型的な実戦派左腕というタイプで、春は智辯を相手に2失点完投勝利の栄誉も。また、2年生の2番手投手芝田も同系統の左腕で、秋は智辯との3位決定戦に好投、春もシードがかかった8強の高田商戦の先発を任され、5回無失点とよく役割を果たしました。

秋8強の郡山は下級生時から経験豊富な技巧派左腕青井くんと180センチ越えの速球派右腕崎山くんの二枚看板。春は強打の磯城野に屈して、観る前に負けてしまったので、なんとも言えないですが、資質の高い投手たちであることは確かなので、強豪私学としては早い段階でぶつかりたくないチームの1つでしょうね。

近年上位常連の香芝は1年秋から主戦クラスで投げていた変則右腕の森嶌が中心ですが、昨夏登板があった本格派右腕の和田も復調してくるようなら力のある2枚が揃うことになります。

春8強の一条は近年の同校エースっぽいあまり力まずに腕を振っていくフォームを継承しているエース右腕原田と大型サイドハンド密陽(みつひ)の布陣。旧チームから投げている右サイドの神山くんが復帰すれば、いっそう分厚い体制になりますが、ここはとにかく守備ですよね・・・(あえて打つこと重視で挑んでいる体が潔く、観る方としては面白いですが)。
同じく春8強の女子大付は1年トリオで春季大会を盛り上げた一角三田がエース早崎との継投で夏の健闘も楽しみ。ようつべにうpしている方のおかげで多少見させてもらったのですが、16強くらいまでは頻繁に顔を出してた10年前くらいにいた反田くんとか寺村くんとかを思い出させる好投手だなあ・・・と。彼らがマックス135くらいは出てたと思うので、2年後にそれくらいまで行くのか、あるいは越えるのか。
ドットコムの記事を見て、まず部員が26人もいることにたまげましたが(強かった10~15年前くらいでもその半分強くらいがデフォでしたから)、競争の多い環境も刺激に出来るという点は大きなプラスになるでしょうね。 

奈良は昨秋天理を相手に「あわや」の快投を演じた2年生右腕の増田を中心に分厚い投手層で注目。増田くんは今春やや調子が悪そうでしたが、代わりに左腕下井くん、ショートリリーフで登場し、まっすぐの速さが目を見張った杉江くんらが台頭したのは大きい。

やはり昨秋天理打線を相手に好投を見せ注目された五條の2年生右腕中内くんも夏の活躍が楽しみな一人、2年生では奈良朱雀の右腕前田も荒削りながら大型の右腕で角度のある投球が見もので、この夏どれくらいまとまってきたか注目したいなと思っています。

この他、春の智弁戦で延長を投げ抜いた関西中央の右腕、 添上の上田、磯城野の大西(2年)も力がある。登美ヶ丘は山野小幡林田、桜井は右腕三戸、右サイド大西、左腕平尾(1年)、王寺工は池内豊田(ともに右腕)、青翔は中山金山元村、帝塚山は徳永西木家城らによる継投を駆使して勝ち抜きたいところです。

トリを飾るのは畝傍の強力投手陣。その中心に君臨する坂本くんは、秋に不完全燃焼のまま敗退したことで、成長を掴みきれていませんでしたが、この春は昨夏のリベンジに燃える奈良大付を相手に延長タイブレークを投げ抜いて返り討ち。
その内容も試合後半に足の痙攣を負い、終盤は幾度もサヨナラ負けのピンチを背負いながら驚異的な粘りで凌ぎ切り、タイブレークでは試合を決める3ランを放つおまけ付きでしたから、 ただただ圧巻という以外に称えるべき言葉が見つからない大立ち回りでした。
とはいえ、今年はシードも逃し、彼1人で投げ抜くには酷な状況。それだけに同じ3年生左腕の四方や右腕上西、1年生右腕の吉永植村ら控え投手陣の頑張りも重要となってきます。とりわけ、勝手に「畝傍のペローン」と読んでいる変則左腕の四方くんは坂本くんに比肩する能力を持ちながらも、立ち上がりに制球が乱れて失点するケースが続き、印象を悪くしているのが惜しい。自ら崩れる場面さえ減ってくれば、そうそう打たれる投手ではないことは下級生時代からの登板内容が証明しており、最後の夏、なんとか一皮剥けて甲子園を掴む原動力になってもらいもの。