行き当たりで書かざるをえない状況下、成り行き上朱雀と畝傍に関してはまとまったチームごとの感想を書けませんでしたが、畝傍はまた次戦以降。朱雀はまた6月に15チーム分くらいの戦力分析記事をアップする予定ですので、そちらに回すということでご了解ください。

25日
奈良5-1奈良朱雀
奈良は初回、3番森田、4番大橋の2者連続ホームランで3点先制。追う奈良朱雀は2回、無死1塁から7番南のタイムリー2ベースでまず1点。8番手嶋がバスターで技ありのライト前ヒットを放った後、1死満塁まで行ったのですが、2番今西が併殺に倒れ、奈良の先発下井を崩しきれなかったのが響きました。
奈良はこの後3回に大橋の犠飛、5回には森田のタイムリー2ベースで、朱雀の2番手前田から着実に加点。守ってもミス(記録に残らないもの含め)やバッテリーエラー自体は少なくなかったのですが、一塁フライ落球のこぼれたところを落ち着いて処理しての二塁封殺やバッテリーエラーの間に三塁を欲張ったランナーをしっかりタッチアウトにするなど慌てずリカバリーは出来ていましたし、ピンチに繋がった局面でも最後のところでショート大坂、サード市川らを中心に堅く守って、得点を許さなかったのは見事。だからこそ継投も3回から増田、6回から山下、8回から杉江と、いずれもイニング頭からの登板となり、全体としてもある程度思惑通りに運べた試合内容だったのかなと思いました。
戦力については、16強の展望で投手陣に触れたので、ここでは野手に触れると、1番市川、2番安田が出て、力のある3~4番で返すという形がしっかりしているのは良いところ。
ただ、欲を言えば、投手を置いために、相次ぐ継投によって並ぶ名前が安定しなかった5番のところにもう一枚ポイントゲッターが居れば・・・とは思いました。7番の大坂くんがタイプ的には2番向きで、長打もある2番の安田くんを5番に置くというのも面白そうですが、ともあれ去年も春と夏では大きく打順が違いましたから、夏に向け修正を入れてくる可能性は高い。スタメン外だった選手の台頭も含め、期待をしていければなと。

朱雀は3回からロングリリーフで好投の2年生右腕前田が収穫。おそらく公式戦初登板だったかと思うのですが、立ち上がりを中心にその後も幾度か制球が大暴れする場面を見せながらも、終わってみれば怖い奈良打線を相手に7イニングを最小失点ずつの2失点。指揮官がよくぞ我慢して引っ張ったというのもありますが、180センチ越えの角度から伸びのあるまっすぐと縦スラっぽい落ちるボールのキレも良く、だいぶリラックして投げられるようになった終盤は目を見張るような球も行っていました。まだまだ先のある投手ですし、この試合を自信に大きく伸びてもらいたい投手の一人です。


御所実4-3香芝
香芝の森嶌くんって下に近いくらいのサイドハンドだった憶えがあるのですが、この日観たらスリークォーターくらいに腕の位置が上がっているように見えました(気のせいかもしれませんが)。
秋に対戦してる御所実としては、ややそういう面(繰り返す通り管理人の単なる気のせいかもしれませんがw)で対応しづらさがあるのかとも思ったのですが、なんのそので3回には2回り目の1番谷村、3番森田がタイムリーを放ち2点先取。4回にもスクイズと9番奥田のタイムリーで2点を追加し、このカード3季連続での勝利に向け、順調そのもの。
投げては、エースナンバー藤田くんが昨年のセンバツに出ていた報徳・中村くんみたいにいい感じでバラつくのが踏み込みを許さない要因になり、また配球的にもそこをプラスに作用させながら小気味良く投げて中盤まで香芝打線を翻弄。その頃ブルペンでは山本くんが重そうな球をビシバシ決めていましたから、その光景を見て、山本くんに何かあったんじゃなく、ただただこの藤田くんが一冬で急成長した結果のエースナンバーなんだということを実感出来ました。

しかし、香芝打線も力量・経験ある打者が並ぶ。6回、3回り目を迎えると教科書通りに対応力倍増。 先頭倒れた後、1番杉山ヒット、2番増井が粘りに粘って四球、3番関岡がレフト前に運んで満塁から、4番平田がセンター前2点タイムリーを放ち、なお1死、1・2塁。
すると、ここで御所実ベンチもスパッと継投を決断。満を持して山本くんに今大会初マウンドを任せます。迎えるは5番星里、高いバウンドの投ゴロで山本くんは二塁送球し、封殺。一塁送球もさすがにこれは併殺崩れ・・と思って一塁を見てたら、なんと2塁走者関岡くんが猛然と本塁突入し、生還の好走塁。スタートを切っていたかは確認していなかったのですが、御所実サイドの守りにさしたる遅れはなかったので、何にせよ鮮やかな疾走劇で1点差にまで詰め寄った。
このイニングは香芝打線さすがの対応力に機を謝らない御所実ベンチの継投判断、さらにはこの関岡くんの好走塁と見どころ凝縮で、この日3試合中でも随一に内容の詰まった局面続きとなりました。

香芝は投げても森嶌くんが尻上がりに調子を上げて御所実打線に追加点を与えず、追い上げの機運を高め、打ってはあたかも山本くん対策を練っていたかのように下位打者に次々代打を送っていくのですが、立ちはだかる山本くんに乱れはなく、西条時代の秋山拓巳を思わせるゴツイ体と直曲球織り交ぜたバランス良いピッチングで1点の重みを感じさせる快投を続けていった。6回、後一人継投の判断が遅れていれば試合展開も大きく変わりかねなかった場面で的確に山本くんを送り込んだベンチの好判断が実り、御所実が三度香芝を打倒。3季連続でのベスト8入りに王手をかける勝利を手にしています。

畝傍9-3奈良大付
あまりにも長い試合だったので、要点だけ。
奈良大先発の中山くんはセンバツと比べても一段ギアを上げてきたような圧巻の立ち上がり。大型の速球派というカテゴリだとは思うのですが、制球に破綻がないのも魅力で、もはや「坂口の控え」とは思わせないくらいのボールを投げていました。ランナーを出してからの投球で相手も色々やってくるチームという意識付けがなされているのもあいまってか少し苦労していましたが、そこは現在進行形で実戦経験を高めている段階のはず。夏までにはもう一回りも成長して、非願成就へ不可欠な存在となることでしょう。
2番手で6回から投げた坂口くんについてはセンバツと同じような印象。彼本来のものからすれば決して良い状態ではないんだろうけど、トータルで失点を少なく抑えていく能力はやっぱり群を抜いています。
また、週ベの総括記事でも触れられていましたが、センバツでのセンターから一塁に戻った池田くんや二塁(途中から遊撃)の前田くんがエースのもとへ如才なく声を掛けに行く姿は今や奈良大の試合をよく観に行くファンにとってもお馴染みの光景ですが、この日も例に漏れず。とりわけ決して注意深く見ていたわけではなくとも池田くんの全体も含めた行き届きぶりには自然と視線が向きますし、改めて感心させられることが多かったですね。

・・で敗因については、やはりどう考えてももう一本が出続けなかった打線ということになってしまうわけですが、センバツから野手では3人を入れ替えて打順も2~4以外は組み替えた。積極的に抜擢した2年生に伸び伸びとやらせて打線全体に活気を与えんとする意図は痛いほどに見えて、実際各選手ヒット自体は出ていたわけで、本当に「もう1本」のところだけなんですよね・・・
どうすれば・・・というのが分かっていればとっくに手を打っているだろうし(苦笑)この日も畝傍のエース坂本くんが上回ったといえば話は早いのですが、坂口くん、中山くん中心に守りも堅く、失点を計算できるチームなわけですから、夏に向けてやるべきことは1つ。ノーシードから挑む夏の捲土重来を願わずにはいられません。

おまけ
タイブレークに関しては、「先攻側の結果を見て攻め方を考えられるから後攻の方が有利」という何度考えてもよく分からない意見が闊歩していましたが、いい意味でそのセオリー(?)を裏切る結果になりました。

個人的には
①先攻の方が攻撃の自由度が高く、流れを支配していけるのに対し、後攻は自チームの攻撃時ではなく、回の頭に先攻といっしょにどの打順から攻めるかを決めねばならない分、「攻め方を考えられても、その作戦に対応できる打者ではなかった」などの状況も多々生まれるであろう点
②先攻は表のスコアによって守り方を決められるが、後攻は却って守り方の徹底が難しい点

などからわずかに先攻が有利とさえ感じていて、仮に13回あたりからの採用とするならば、12回までの後攻有利と上手くバランスが取れていいのでは?くらいに感じていたので、「報知」誌などに載っていた「後攻有利(だから制度にも反対)」との論調には、新たに先攻・後攻を決められるわけでもなし、後攻有利というなら普通の延長でも同じ(というかより後攻有利の度合いが強い)だろうというそもそも論も含め、戸惑っていましたが、この日の結果も踏まえ、ある程度固まった意見が芽生えつつありますので、また余裕ができた時に独立した記事でその辺りを検証していければと思っています。


郡山分
磯城野4-2郡山
郡山は青井くんが4失点、打っても2点どまりと精彩を欠いたよう。また、夏に出直しですね。

高田商8-1奈良情報商
奈情商としては、増谷くんら投手陣が踏ん張れないとこういう展開もやむなし。現状の地力差が素直に出たのかなと。 なお、高田商は2年生エース石橋が投げず、2年中と3年吉岡によるリレー。

奈良北5-2智弁学園
智辯打線に先攻を許さず、逆に折り返しで3点のリードを作るという奈良北からすればまさに理想的な試合展開。堀川くんほどの投手にこの点差を作られては智辯打線とて攻略に苦労するのは当然でしょう。
秋に観てますが、奈良北はホントに目立った弱点のない強いチームですから、特に堀川くんに疲れがない段階では十分こういう展開も起こりえます。こういった強豪相手の勝利が更にチームを成長させるキッカケになって、また他県強豪との練習試合なども増えていけば、いっそう成熟した形で実りの夏を迎えられるやもしれません。