西武の場合、単純な単年の戦略評価という以外に、やはり近年これだけ続いているチームの「顔」たる人気選手の流出をどう考えるかという問題もあるのですが、ここではあくまで前者に絞っての評価をメインとしています。


投手の△は左腕、野手の△は左打ち

IN
△森友哉 捕手 大阪桐蔭高(ドラフト1位)
山川穂高 内野手 富士大(ドラフト2位)
豊田拓矢 投手 TDK(ドラフト3位)
金子一輝 内野手 日大藤沢高(ドラフト4位)
山口嵩之 投手 トヨタ自動車東日本(ドラフト5位)
岡田雅利 捕手 大阪ガス(ドラフト6位)
福倉健太郎 投手 第一工業大(ドラフト7位) 

グレッグ・レイノルズ 投手 シンシナティ・レッズ(MLB)
マイケル・ボウデン 投手 シカゴ・カブス(MLB)
中郷大樹 投手 千葉ロッテマリーンズ(人的補償)
コーディ・ランサム 内野手 シカゴ・カブス(MLB)
△脇谷亮太 内野手 読売ジャイアンツ(人的補償)

△ボーフィリオ・ロペス 投手 ヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・メルセデス・サント・セロ・ラ・ベガ高

OUT
デニス・サファテ 投手 →福岡ソフトバンクホークス(フリー)
涌井秀章 投手 →千葉ロッテマリーンズ(FA)
山本淳 投手
坂元弥太郎 投手 引退 
△石井一久 投手 引退

岳野竜也 捕手 引退(埼玉西武ライオンズブルペン捕手)
△クリス・カーター 内野手
スピリー 内野手
△嶋重宣 外野手 引退(埼玉西武ライオンズ二軍守備走塁コーチ兼打撃コーチ補佐)
△星秀和 外野手 →群馬ダイヤモンドペガサス(BCリーグ)
 



<退団選手概観>
片岡涌井という長く主力で活躍し、昨季終盤の快進撃においても大車輪の活躍を見せた2人がFA宣言して他球団へ移籍、リードオフマンのヘルマン、セットアッパーのサファテも退団とダメージの大きいオフであったことは否めない。少なくとも現段階ではマイナス査定とせざるを得ないですが、決して新戦力の活躍や現有戦力の底上げで補えないレベルの深刻さではないし、主力の退団を乗り越えて上位を維持してきたチームとしての実績も豊富。新指揮官のやり繰りにも一定の信頼が置けますから、また新たなスタート地点と思えば、そこまでネガティブになる必要もないでしょう。

<選手別分析>
涌井秀章 代替戦力:レイノルズ、ボーデン
必要な戦力ではあったことに疑いはないが、流出やむなしの構え方に見えたのも確か。資金面の事情を絡めて論じられると何も反論できなくなるのは確かながら、もう少し功労者に対する「情」が見えても良かったのでは?
サファテ 代替戦力:ボーデン、豊田拓矢
不動のセットアッパーだけに当然残留を期待したいところだったが、ソフトバンク移籍を決断。来季からは同リーグのライバルとなる。
石井一久 代替戦力:菊池雄星
未勝利に終わるも、12年には二桁勝利を上げていた。200勝も視野に入るこのタイミングでの決断は実にこの人らしい引き際に。在籍6年で通算45勝、FA獲得選手として恥じない実績を残した功労者でした。
片岡治大 代替戦力:浅村栄斗、脇谷亮太
楽観的に考えるならば、ここ数年も故障離脱が多く、居ない時の戦い方にも備えは十分。浅村がスンナリと後釜に収まれば少なくとも「戦力面」での不安は最小限に。
ヘルマン 代替戦力:ランサム、栗山巧
形としては「流出」だが、高い出塁率と俊足でリードオフマンとして機能する反面、守備力、長打力などに不満もあり、新指揮官の評価するタイプではないだけに、ランサムとトップ再転向の栗山の活躍次第ではプラス収支も。
スピリー 代替戦力:アブレイユ、山川穂高
中軸として起用される時期もあったが、結果残せず。
カーター 代替戦力:坂田遼
シーズン途中で復帰も結果残せず。
嶋重宣 代替戦力:坂田遼、大崎雄太朗
衰え否めず、引退を決断。いつかまた広島にも・・・


<新加入選手概観 その他加入組>
もちろん、未知数と言わざるをえない戦力も多いですから、現段階でポジティブな査定は難しいですが、補強戦略自体の巧みさは相変わらずで、抜けた選手の穴埋めにはしっかり着手出来たように思います。
「その他」部分で言えば、涌井、サファテと抜けた守護神候補にボーデン、また前政権の先発投手偏重編成を修正し、十亀あたりを後ろに回す指揮官の構想があり、その分の頭の候補としてレイノルズを獲得とバランス良く補強。ロッテからの人的補償として獲得した中郷も中継ぎの即戦力として貴重な存在になるでしょう。
野手では、ヘルマンの代わりの三塁手に中軸候補のランサムを補強。ヘルマンとはタイプの違う長打力に持ち味のある打者で、代わりにヘルマンの抜けた切り込み隊長の位置には、経験十分の栗山をシフトする。また、片岡の抜けた二塁には浅村を配置する青写真を抱き、ランサム、浅村両方のバックアップとして巨人から人的補償で獲得した脇谷の存在を利かせる・・・と。もちろん、欲を言えばもっと層を厚くしたいところはあるでしょうが、資金面盗制限がある中での動き方としては非常に的確なものだったと評価できるでしょうね。

<新加入選手概観 ドラフト加入組>
指名自体の感想については、こちらを御覧ください。
以下、「その他」部分との噛み合わせ箇所を触れていくと、3位の豊田はリリーフ強化のもう一手となる即戦力補強に。涌井、サファテに流出可能性がある中で、即上でやって行ける投手の指名が豊田だけという点をドラフト時点ではやや不十分に感じていましたが、「その他」で補完する補強を敢行、外国人枠も、現時点で野手の支配下保有はランサムのみ、つまり投手に3つ使う形になっていますから、これならば上位指名に山川とリスクの大きい野手指名を重ねたことによるマイナスの影響も最低限となったでしょう。
大社世代が多いながらも、開幕1軍という意味では豊田以外の選手が食い込む可能性は決して大きくない将来性重視のドラフトですが、いい意味でその予想を裏切るような新星がキャンプ、オープン戦を通じて浮上してくることにも期待したいところで、5位の山口、6位の岡田あたりが候補になってくるのかなと思います。

<2月以降の動きについて>
とりあえず、支配下登録数も余裕がありますから(1月末時点で65)、アブレイユ、ロペス、水口といった育成枠勢に昇格の望みを残しつつ、さらなる補強に動ける余地は残っています。赤田⇔阿部、江草⇔嶋など、ここ数年でもキャンプ~開幕前に動いた実績はあり、キャンプを観ながら柔軟に対応していきたい。
同じく毎年のように敢行されるシーズン途中での新外国人獲得の流れもありうるでしょう。一部報道があって以降は沙汰やみになった感のあるラミレス獲得も、シーズンインして以降のオプションとしては視野に入っているのかも。


<主要選手別分析>
豊田拓矢
<望外>チーム状況も相まってルーキーイヤーから守護神に。去年で言えば石山(ヤクルト)のイメージで。
<ノルマ>年齢的にも1年目から勝負をかけたい立場。即戦力の呼び声高く、増田、大石らに出遅れ可能性ある状況からも開幕1軍入りと30試合以上の登板を期待したい。


ボーデン
<望外>08年のグラマン、10年のシコースキーのような安定感抜群の守護神として君臨。
<ノルマ>去年のサファテくらい・・・というと幾らか初来日の助っ人に対する<ノルマ>としては酷な気もするが、守護神でなくとも勝ちパターンの一角として50試合以上の登板数を重ねられれば。
<失望>彼を見て、12年の開幕時守護神・ゴンザレスを思い出すファンが多くなる=<失望>のシナリオなのかなと(汗)

レイノルズ
<望外>映像をちょっと齧ったレベルの感想ですが、タイプ的にもキャリア的にもなんとなくバリントン(広島)っぽい印象。いきなり13勝をマークした彼の1年目がベストな青写真。
<ノルマ>彼が岸、牧田、菊池といったエース格に続く存在感でローテに収まっていけば、十亀らを後ろに回していく構想にも目処をつけやすい。エース級の成績でなくとも、怪我なく通年でローテを計算できれば。
<失望>あまり良い書き方が思いつかないので、退団せざるを得ない成績に終わった場合という元も子もない表現で(汗)

郷大樹
<望外>登板ごとに信頼を高めて勝ちパターンの一角に加わり、キャリアハイレベルの好成績をマーク。
<ノルマ>12年44試合6ホールド、13年37試合15ホールドという1軍での登板実績があるだけに、そのあたりの数字を今季も期待されることになる。ある程度イニングを食える良さもあるだけに重宝されるのは間違いない。
<失望>とにかく、即戦力として一軍で投げてもらうことが全てですから、その期待に応えられなかったとすれば厳しい評価になってもやむを得ない。

ランサム
<望外>序盤からホームラン量産、定評ある守備でも貢献し、中村の状態次第では4番も。
<ノルマ>指揮官公表の開幕スタメンでは6番打者との想定。かつてのマクレーンのように守備面で破綻なく、随所に一発の魅力を発揮すれば、ノルマとしての期待には沿えるだろう。
<失望>打てることだけを求めるならば、唯一の支配下外国人野手枠を三塁には使わない。打撃以上に守備面での安定度が問われることに。編成上の泣き所だけに、キャンプ~オープン戦で目処立たぬならさらなる補強も?

脇谷亮太
<望外>現時点での想定ではユーティリティの域を出ないが、レギュラーとして戦える力はある。主力の怪我や調子次第で得たチャンスから、スタメンに不動のピースへと上り詰めるか。
<ノルマ>内野全ポジションをこなすユーティリティ性と勝負強い打撃を活かし、かゆいところに手が届く戦力に。
<失望>ユーティリティや勝負強さよりも攻守の粗さが目立ち、ベンチの信頼を得られず。

森友哉
<望外>1年目から堂々の1軍デビューで攻守に高い潜在能力を証明。
<ノルマ>ただ、キャッチャーとして考えている以上、現実的にはよほどのことがなければみっちり2軍で・・・という一年目になるだろう。



現有戦力編
<ブレイク期待の若手投手>
岡本洋介
昨季後半に中継ぎで好結果を残し、先発昇格後も好調持続。CSロッテ戦では窮地のチームを救う圧巻の完封勝利も。今年は通年で結果を残し、本格ブレイクの1年としたい。
<ブレイク期待の若手野手>
木村文紀
12年終盤に野手転向し、本格的な野手挑戦初年度となった昨年は11試合出場ながら、DeNA・三浦からプロ初アーチを放つなど能力の片鱗を垣間見せた。同じくドラ1指名された投手から野手に転向し、今やリーグを代表する存在となった糸井(オリックス)を目指し、今季はステップアップの一年に!
<復活期待のベテラン投手>
松永浩典
12年は56試合に投げた貴重な変則左腕だが、昨季は怪我でシーズンを棒に振った。返り咲きを願う声は多い。
<復活期待の主力野手>
中村剛也
あえて多言を要する必要もないだろう。今季から新たに4年の大型契約を結んだ「おかわりくん」の復活如何がチームの覇権を左右する。