昨年から明らかにバージョンアップした戦力を擁し、下馬評覆してのAクラス入りとなった昨季を越える活躍が期待される今季のロッテ。ただ、このチームかれこれ20年ほど2年続けてのAクラスがないんだよなあ・・・


IN
石川歩 投手 東京ガス(ドラフト1位)
吉田裕太 捕手 立正大(ドラフト2位)
三木亮 内野手 上武大(ドラフト3位)
吉原正平 投手 日本生命((ドラフト4位)
井上晴哉 内野手 日本生命(ドラフト5位)
二木康太 投手 鹿児島情報高(ドラフト6位)
△肘井竜蔵 捕手 北条高(育成ドラフト1位)

涌井秀章 投手 埼玉西武ライオンズ(フリー)
ルイス・クルーズ 内野手 ニューヨーク・ヤンキース(MLB)
チャッド・ハフマン 外野手 メンフィス・レッドバーズ(MLBセントルイス・カージナルス傘下3A)
△岸敬祐 投手 読売ジャイアンツ(フリー 育成選手契約)
金森敬之 投手 四国リーグ・愛媛マンダリンパイレーツ(育成選手契約)


OUT
中郷大樹 投手 →埼玉西武ライオンズ(人的補償)
△吉見祐治 投手 →阪神タイガース(フリー)
渡辺俊介 投手 →ボストン・レッドソックス(MLB マイナー契約)
△ウィル・レデスマ 投手
リッキー・ゴンザレス 投手
薮田安彦 投手 引退(野球解説者)
小野晋吾 投手 引退(千葉ロッテマリーンズスカウト)
橋本健太郎 投手 引退(阪神タイガース打撃投手)
山室公志郎 投手 引退
山本徹矢 投手 引退

青野毅 内野手
△ジョシュ・ホワイトセル 内野手
△工藤隆人 外野手 →中日ドラゴンズ(フリー) 


<退団選手概観>
渡辺、薮田、小野と長くチームを支えた功労者が退団あるいは引退の道を選んだことが大きなトピックになりました。いずれもアラフォー世代、戦力として見ればばだいぶ厳しくなっていた時期ということで今季への大幅ダウンということはないのですが、あまりにも大きな名前が3人揃って同じ年に・・・というのはなんとも寂しいもの。
とはいえ、他にも吉見、橋本、工藤ら30代半ばに達し、あるいは達しつつある選手の退団が目立ち、昨季に続いて着実な世代交代、戦力整備の流れを進めた印象が強いのも事実です。今江の慰留に成功したことで働き盛りの主力クラスの流出もなく、感傷を振り払ったのちに客観的な視点で分析するなら、 田中、マギーが退団の楽天、イデホ、バルを抜かれたオリックス、涌井、片岡、サファテらを流出の西武、鶴岡、ウルフのハムと比べ、そういうものがほぼなかったどころか、「獲る側」に回る場面も演じた今オフの動向にはきわめて高い満足度が与えられるでしょう(中継ぎの戦力だった中郷、レデスマの退団はありましたが、彼らのリリースにせよ、新たに加入したビッグネームの獲得があればこそですから)。
「獲る側」について、詳しくは後述。


<主要選手別分析>
中郷大樹 代替戦力:上野大樹、南昌輝、吉原正平
貴重な中継ぎ右腕だったが、昨季後半は腰の故障で離脱していた時期も短くなかっただけにプロテクト当落線上であったことは確か。上野、南、大谷らが穴を埋めて欲しい。
渡辺俊介
在籍13年で通算87勝のサブマリンはメジャー志望を表明し、退団。レッドソックスとマイナー契約を結び、新天地でもう一花咲かせる!
薮田安彦 代替戦力:益田直也、内竜也
1度目はYFKの一角として、2度目は不動の守護神として日本一獲得に貢献した名投手も登板なしに終わった昨季限り。益田、内ら今季の守護神候補がその魂を受け継ぐ。
小野晋吾 
在籍16年、通算85勝をマーク。渡辺、薮田とともに二度の日本一を知るベテランも昨季でユニフォームを脱ぐ決意を。「サンデー晋吾」の呼び名で鮮烈デビューを果たしたのは高卒7年目。プロ入り数年後までは谷間の先発投手として目立たない存在であった薮田ともになかなか芽の出ない苦しみも味わいながら、遅咲きの大輪を咲かせたその姿は昨季の西野、古谷、服部、あるいは復活の兆しを見せた大嶺らにも重なり、チームの良き伝統として確かに受け継がれている感慨が迫ります。
ゴンザレス 
グライシンガーに続く再ブレイクならず。全盛期を過ぎた感は否めなかった。
△レデスマ 代替戦力:服部泰貞、中後悠平
途中加入から含めて2シーズン目の昨季は後半から1軍に定着。粗さはあるものの十分な戦力になっていただけに、貴重な左腕という面でも放出は意外。ただ、お金を使ったストーブリーグだっただけに、意外に高い年俸面を考慮してもやむを得ないか。
△ホワイトセル 代替戦力:ブラゼル、大松尚逸
怪我と不調で不振の2シーズン目。緊急補強のブラゼルに役割を奪われ、そのまま退団。
△工藤隆人
貴重なスペシャリストも同タイプの揃うロッテでは出場機会に恵まれなかった。中日でもうひと頑張りできるか。


<新加入選手概観 ドラフト加入組>
こちらを御覧ください。

<新加入選手概観 その他加入組>
まんべんなく補強ポイントを補うことのできたドラフトでしたから、その他での狙いは主力クラスのさらなるグレードアップ。その意味ではパ・リーグを代表する投手の1人である涌井とメジャー実績十分のクルーズを獲れたことは非常に大きな成果であり、時折あっと言わせる大型補強を展開するロッテの真骨頂とも言えるストーブリーグでした。
形容が雑すぎるならご容赦いただきたいですが、涌井は石川、クルーズは三木(更に言えばハフマンは井上)を獲得した意義に合致する、ローテ候補、右打ちのオールラウンダー(右の大砲候補)の補強ポイントに適する存在。意識しての動きというわけではないにせよ、ドラフトでの好動向があったからこそ二重に層を分厚くするような「その他」での補強を成し得た。繰り返しになりますが、つくづく満点に近いオペレーションでした。

<2月以降の展望>
何気に支配下選手保有数がまだ64名なんですよね。まあ、7月末までに埋めればいいですから焦りはないでしょうし、育成枠の金森、岸のどちらかを上げるのか、あるいは春季キャンプでも何人か新たな候補をテストするのか、じっくり見極めていくことになりそう。トレードがあるなら、予想できるのは保有数の多い捕手や能力の高い選手が揃う外野で投手獲得を狙う動きと見ますが・・・

<主要選手別分析>
石川歩 
<望外>先発ローテ入りして二桁勝利。かつての久保康友のイメージで。
<ノルマ>本人が目標に掲げる一軍定着は社会人出身ドラ1投手としてノルマになってくる。適性の判断やチーム状況によっては中継ぎでも。

吉原正平
<望外>藤岡よりも益田が即戦力となったように、適性ありと評される中継ぎを主戦場として1年目から50試合以上登板の大活躍。
<ノルマ>中郷の抜けた穴を即座に埋め得る速球派右腕。昨年の中郷の成績(37試合、15H、3.31)と同等のパフォーマンスといえば、さすがに望み過ぎか?

涌井秀章
<望外>最多勝争いに絡むような鮮烈な復活劇。あくまで先発としての自分に拘った男の華やかな「第2章」に。
<ノルマ>とにかく、年間通してローテを守ること。本人もその点を自らに課す最大のタスクとしている。
<失望>FA選手だけにやや厳し目に書くとすれば、やはり先発として期待し、自らもそれを求めての移籍。守りきれないならば失望の声は免れない。

吉田裕太
<望外>捕手の候補が多かった昨年のドラフト、伊東監督は多くの選択肢から迷わず吉田裕太の名を選んだ。待望の「ポスト里崎」を猛アピールするシーズンに。
<ノルマ>名捕手であった監督垂涎の獲得選手。ポジション柄我慢も必要だが、使われる機会は必ずや訪れる。まずは1軍入りを巡り、年下ながらもプロキャリアでは先輩にあたる江村、田村との競争を勝ち抜けるか。

クルーズ
<望外>好守光る中距離ヒッターの評判にもかかわらず、ホームラン30発打っちゃうシーツ(元阪神など)コースに乗れるなら。
<ノルマ>捕手以外はすべて守れるバリバリのメジャーリーガー。内外野全てのポジションのレギュラーとレギュラー候補にきわめて大きな刺激を与える存在になりそうで、それだけでも獲得の意義があるが、二遊間の守備力に課題のあるチーム状況だけに、いずれかのレギュラーとして使えるのが理想となる。
<失望>チームにおける近年の外国人野手としては屈指の待遇・評判を帯びての来日。攻守にハードルが高くなるのはやむを得ない。とりわけ守備に関する期待が大きいだけに裏切る結果なら・・・

ハフマン
<望外>チームに不足する右の強打者として25発クラスに確実性も伴ったベニー1年目の再来に。
<ノルマ>外野、DH(一塁)の右打者なら、競争相手はGG佐藤やサブロー。外国人枠を使ってでも・・・の魅力を示すにはやはり一定以上の長打力が必要。
<失望>外国人選手枠5番目の評価を覆せぬまま一軍出場もわずかに終わる。



現有戦力編
<ブレイク期待の若手投手>
川満寛弥
大卒1年目ながらチーム最年少という立場もあり、昨季はファームでじっくりと研鑽を積んだ。シーズン後のフェニックスリーグで好投を続け、今季のブレイクが期待される。秋季キャンプで負った怪我の回復具合が心配で決して慌てる必要はないが、順調に行けば開幕1軍入りもあり得る。

<ブレイク期待の若手野手>
加藤翔平
昨季はファームでリーグ屈指の好成績を記録、1軍でも初打席初HR、プレーオフ初打席初HRの離れ業をやってのけ、成績以上のインパクトを残した。大きく育てたい逸材で今季は一軍定着がノルマになる

<復活期待の主力投手>
成瀬善久
横浜高校で1年後輩の涌井が加入し、刺激にならないはずがない。リーグ優勝という目標へ向け、エースの完全復活は必須。

<復活期待の中堅野手>
大松尚逸
一塁、DHは井口、ブラゼル、福浦らの壁が厚く楽ではないが、とにかく打って結果を残すしかない。まだ32歳、十分に力は出せる年齢だ。