いまさらですが、先週土曜の観戦記を上げていきます。順番無視でまずは第3試合から。体調が悪いせいかどうかは自分でも分かりませんが、なんだかとっても辛口に仕上がってしまいました。

智辯学園 000001000 1  尾田、岡本‐吉田  
龍谷平安 01001000×   2 高橋奎、中田‐高橋佑

平安の先発は前の試合公式戦初先発で9回途中まで無失点と快投を演じた1年生左腕高橋奎。榎田を複雑にしたようなというか、いわゆる「出どころの見難い」少し個性的なフォームですが(ただ、球筋自体にさほどのいやらしさはないと思います)、打者からすればタイミングが取りづらく、しなやかな腕の振りで緩急を使い分けると、配球の巧みさ・制球の良さも相まって智弁打線を翻弄の一途に。何よりこの投手、身体もまだまだ細く、顔つきにもあどけなさが残るながらも物おじしないマウンド度胸は見上げたもの。それは徳本のタイムリーに繋がった2回1死1・2塁、さらには4回無死1・2塁と2度の機会できっちり決めてきた犠打の精度にもよく現れていました。

そんな高橋のリズムあるピッチングに、打線も初戦から続く好調を継続し、2回の先制以降もチャンスの連続。しかし、智弁の尾田投手も5回までに二桁安打を喰らう苦しいピッチングながらも、要所で強気を崩さず、力のあるボールを厳しいコースに投げ込める粘り強さが成長の跡。バックも再三の堅守で盛りたて、3回、4回と大きなピンチを切り抜けます。

それだけに、平安としては、5回先頭の姫野くんが嫌な流れを断ち切るレフトへの一発でを放ち、「次の1点」を奪えたことが大きかったかと思われました。しかし、ここから試合はさらに動く。6回、智弁は怪我の廣岡に代わって、この日1番に入った岩田がこの日2本目となるヒットを放ち、無死1塁。犠打・犠飛・敬遠気味の四球(対岡本)で2死、1・3塁とこの日一番のチャンスを迎えると、ここで平安ベンチが予想外の動き。好投の高橋をスパっと諦め、エースナンバーの右腕中田を投入する。
(※現場で見ていて、「ここで代えるの?」と不思議でしたが、どうやら高橋くんは親指の痙攣でここらが限度だったようですね)。
そして、この絶好機に智弁は5番吉田がレフト前タイムリーを放ち1点差。なお続く高岡が死球で歩き満塁とする。押せ押せムードで続く打席には7番中西、しかし、この緊迫の場面はセカンドフライに打ちとった中田の勝ち。同時に盛んにタイムアウトをとって、代わりばなの中田を中心に落ち着きを取り戻すよう促す平安ベンチの執念が実った形でもありました。

その後は、立ち直った中田と7回から尾田を継いだ智辯・岡本の投げ合い。8回智弁は2死ランナー無しからこの日敬遠2四球の岡本が打席に立つも、平安ベンチはここも勝負を避ける判断。悔しさを投球にぶつけた岡本は8回の平安の攻撃をこの日はじめての3者凡退に抑え9回の反撃を待ちます。
すると、9回智弁は先頭の高岡がヒットで出塁し、2死3塁までチャンスを広げる。打席には途中出場の武田。冷たい風が肌寒い会場をこの試合一番の熱気が包む白熱の場面、武田の打球は三塁への力ないゴロとなり、平安が見事2年連続でのベスト4入りを決めました。

試合展開としては、序盤から押しまくった平安が追加点を奪えなかったことで智弁にも勝機が生まれた試合。それだけに、智弁としては「強力打線」の呼び声にも関わらず、一線級の相手(特に緩急とキレで勝負するタイプ)にはまるで機能しなくなる相変わらずの課題が出た試合でした。とりわけ岡本くんが勝負を避けられるというのは、十分想定できたことですから、その中で当たっていた1番岩田くんと岡本くんの間を狙い通りに寸断されてしまったことに試合を通してなんら手を打てなかったというのは厳しいというほかない。
最終回にしても、ここ数年智弁の試合では何回書いてきたか分かりませんが、先頭が出た後で、単純に送って形を作っても、まして下位に向かう打順です。結局そこから打って返すしかないのでは、相手に怖さはないですし、それなら最初から打っていけばいいじゃないか・・・と。結果論とはいえども、それで結果を出せてないわけだから、もう少し柔軟に色々仕掛けていくべきなんじゃないかなあ・・・ 
絶対的な良い悪いではないけど、小阪監督さんは、あの作新戦の負けを経ても、決して自らのポリシーを折るようなことはしなかったんだなあ・・・といういまさらな事実を改めて直視させられる結果になりました。

エースの尾田くんも厳しい書き方をすると、暖かさが増すごとに打ち込まれるケースも多くなっていくタイプかなと思います。そのときに、もちろん二番手以降の底上げも大事ですが、同時に5点取られると6点以上を取ってやれる打線でなければ、出場が濃厚となっているセンバツでも、「1勝くらい」という例年の想定以上の結果を残すことは出来ないでしょう。ポテンシャルとしては県内どころか、近畿でも屈指の水準にあるわけですから、もっと選手が伸び伸びと打席に立てるような方法・采配が求められるのではないでしょうか。

今夏選手権決勝の9回に延岡学園の重本監督が採った采配についても、あの後色々調べていたのですが、やはり傾向としては年齢の高い方ほど、細かい状況に触れず「バントを(さえ)きっちり決めていれば・・・」という意見に寄った人が多かったように感じました。それは、ある意味必然なことなのでしょう。
ただ、小阪さんはカテゴリーとしては、まだまだ「若手」としての位置に類する監督さんです。何も重本さんのように満面の笑みで打者に声掛けをして下さいとは言わないけど(苦笑)センバツでは、そろそろ閉塞感を破る何かを見せて欲しい、そう切に願っています。


ただ、繰り返しになりますが、尾田くんの粘投に岡本くんも思った以上に纏まりある投球を見せた投手陣は収穫でしたし、輪をかけて良かったのが再三のピンチでも動揺することなく安定感を発揮し続けた守備陣。中でもショート吉岡くんは、決して簡単ではないボールを当たり前のように捌く職人肌の守備力を発揮、投手への声掛けも頻繁かつ的確で、バッティングでの4-0を忘れさせる貢献度でした。また、廣岡くんの欠場は心配ながらも、岡本くんの三塁守備が観れたのは現場に駆けつけたスカウト陣にも嬉しいプレゼントだったはず(まあ、もちろんはじめてというわけではないですけどね)。バント処理でダッシュ良く飛び出し、素手で取って送球というなかなか迫力あるシーンもあり、十分に「動ける」ことを証明できたかなと思います。今年のドラフト結果を見ていても、やはり実戦でサードをやっていることは大きなアピールになりますから、その意味においても収穫は大きかったことでしょう。


智弁への思いが溢れすぎて、平安のことを書くスペースが・・・(汗)拙攻続きは相変わらずの課題ながらも、やはりショート石川くんを中心とした守備力の安定は見事でしたし、リリーフの中田くんも、7回以降は力投。左の技巧派から、まっすぐに力のある右投手という王道の継投パターンで逃げ切りましたね。
采配に関しては、7回の3盗に片鱗があった通り、本来、もっと足を使えるチーム。次の相手も守備は堅く、投手も良いですから、簡単に点を取れない相手ということで、ランナーを大事にしたいところではありますが、なんといってもセンバツ確定後の試合です、怖じることなくドンドン攻めて欲しいなという気はしますね。 
打線では、全体的に小柄ながらよくバットが振れますし、ホームランの姫野くん、3安打の河合くんとさすがのパフォーマンスでしたが、そんな中8番を打っていた大谷くんが体格的にもスイングスピードなども目を引く打者だったので、彼が本格化してくるようだと、もう一回り分厚くなっていくのかなあと感じました。